フリーランスの報酬未払いを弁護士に依頼すると費用倒れになる?費用と回収方法を解説

LEGAL GUIDE 未払い報酬・売掛金の回収

請求できるお金があっても、弁護士に依頼すると手元にほとんど残らない。その問題をどう考えるか。

フリーランスや個人事業主として仕事をしていると、「納品したのに報酬が支払われない」「何度請求しても話し合いが進まない」といったトラブルに直面することがあります。

弁護士への依頼を検討しても、未払い額が30万円や50万円程度の場合、着手金・成功報酬・実費を差し引くと、十分な回収ができたとしても経済的に見合わないことがあります。

当職が実際に法律相談を受けるなかでも、法的な請求には理由があると考えられる一方、回収見込みと弁護士費用の関係から、依頼をお勧めしにくいケースがあります。

本記事では、費用倒れが起こる理由を具体例で整理し、支払督促・少額訴訟などの回収方法、将来のトラブルに備える選択肢を解説します。

この記事の結論

未払い報酬の回収では、「請求が認められるか」と「実際に回収できるか」、さらに「費用をかけることが合理的か」を分けて検討することが重要です。 取引前の備えと、事案に適した手続の選択が費用負担を左右します。

01

少額の未払いで「費用倒れ」が起きる理由

弁護士費用は請求額に比例して安くなるとは限らない

未払い報酬の回収を弁護士に依頼する場合、一般に着手金や成功報酬が問題になります。裁判所の手続を利用すれば、申立手数料や送達に必要な費用等もかかります。

請求額が30万円であっても、契約書・納品記録・相手方とのメールの確認、請求権の検討、書面作成、交渉、訴訟への対応などに一定の作業が必要です。そのため、請求額に対する弁護士費用の割合が大きくなりやすいのです。

実務上の問題点

「回収できる可能性がある」ことと、
「弁護士に依頼して回収すべき」ことは、必ずしも同じではありません。

請求額の大小だけでなく、証拠・争いの程度・相手方の資力・費用を総合して判断する必要があります。

30万円の未払いでも、事業への影響は小さくない

例えば月商100万円の個人事業主が30万円の未払いに直面すれば、月商の3割に相当する資金が予定どおり入らないことになります。運転資金や生活費に影響し得る一方、回収のために多額の費用を負担することも容易ではありません。

通常の契約上の報酬請求では、依頼者が負担した弁護士費用をそのまま当然に取引先へ請求できるわけでもありません。裁判所に納める「訴訟費用」と弁護士報酬は区別されます。

02

40万円の未払い報酬を回収する場合の費用比較

例えば、40万円の未払い報酬を全額回収できたと仮定します。単発で弁護士に依頼する際の費用を着手金11万円(税込)、成功報酬17.6%(税込)と仮定すると、弁護士費用は合計18万400円です。

未払い報酬を全額回収できた場合400,000円

請求額と同額を回収したと仮定

弁護士費用控除後の金額219,600円

着手金11万円+成功報酬70,400円を控除。実費は含まない

※上記の着手金・成功報酬は説明用の仮定であり、弁護士費用の一般的な相場や当職の個別事件の料金ではありません。

COST SIMULATION

回収費用を試算する

数字を変更すると、全額回収できたと仮定した場合の「費用控除後の金額」が変わります。下記は費用の比較方法を理解するための試算です。

円
円
%

入力した金額・報酬率は任意の想定値です。顧問契約中の特典例は実回収額の10%(税別=税込11%)を用います。

A|単発で弁護士に依頼する想定

上で入力した仮の着手金・成功報酬率を使用

着手金
110,000円
成功報酬
70,400円
弁護士費用控除後の金額219,600円
B|当職の顧問契約中の支払督促特典

適用条件を満たし、異議による訴訟移行なく全額回収できた場合

支払督促の着手金
0円
特別報酬(税込11%)
44,000円
特別報酬控除後の金額(顧問料・実費を除く)356,000円

※いずれも裁判所費用等の実費を含みません。Bは既に顧問契約中で、当職による個別の受任確認を経て、所定の無料特典が適用された場合の例です。報酬の回収、特典の利用、訴訟への移行がないことを保証するものではありません。通常訴訟への移行、強制執行等には別途費用が生じます。顧問契約は法律相談等を含む継続的なサービスであり、1件の債権回収だけで損得を判断できるものではありません。

単発依頼が合理的な場合もあれば、日常的な契約書確認や継続的な相談を必要とする個人事業主にとって、顧問契約が役立つ場合もあります。単純に「顧問契約の方が安い」と結論付けることは適切ではありません。

03

回収方法を選ぶ前に、確認しておきたい資料

まずは、支払義務の発生、金額、支払時期を示す証拠を整理します。契約書がなくても請求できる場合はありますが、当事者間で何が合意されたかを説明できる資料が重要です。

確認しておきたい資料の例

  • 契約書・発注書・見積書
  • 業務内容や報酬額に関するメール・チャット
  • 成果物・納品記録・作業報告書
  • 検収・受領・完了確認の記録
  • 請求書・支払期日が分かる資料
  • 催告履歴・相手方からの回答

「認めているが支払わない」と「そもそも争っている」は異なる

相手方が支払義務を認めながら支払わない場合と、「納品が未完了」「金額が違う」と主張している場合では、手続選択が異なります。さらに、相手方の資力や送達先の把握も重要です。

資料を整理することで、必要な対応の見通しを立てやすくなり、無用な費用を避けることにもつながります。

04

未払い報酬を回収する主な方法

どの方法が適するかは、相手方の回答、請求額、証拠、費用、回収可能性によって変わります。以下は一般的な検討の順序であり、すべての事案でこの順番に進める必要があるわけではありません。

STEP 01催告・任意交渉

請求内容と期限を明示し、相手の回答を確認。必要に応じて書面で記録を残します。

STEP 02裁判所での手続

支払督促、少額訴訟、通常訴訟などから事案に応じて検討します。

STEP 03支払・回収の実現

任意の入金がなければ、債務名義の有無や財産情報を踏まえ強制執行も検討します。

相手方が請求を争う場合には、STEP 02から通常訴訟を検討することもあります。手続で勝っても、相手に資力がなければ回収できないことがあります。

任意の請求・内容証明郵便

支払期日、請求額、振込先などを明示して催告します。内容証明郵便は文書の内容や発送の記録を残す方法ですが、送るだけで差押えが可能になるわけではありません。

支払督促

金銭等の請求について、裁判所書記官が原則として書類審査で発付する手続です。相手方に支払督促が送達されてから2週間以内に異議がなければ、所定の期間内に仮執行宣言を申し立てることができ、仮執行宣言付支払督促に基づく強制執行が可能になります。

他方、相手方が督促異議を申し立てると、請求額に応じて通常の訴訟手続に移行します。すでに強く争っている相手方への請求では、別の手続が適切な場合があります。

参考:裁判所|支払督促

少額訴訟

60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用でき、原則として1回の審理で解決を目指す手続です。ただし、最初の期日までの準備が重要で、相手方の申立てや裁判所の判断により通常訴訟に移行することもあります。

参考:裁判所|少額訴訟

通常訴訟と強制執行

契約内容や報酬額に争いがある場合などには、通常訴訟を検討することがあります。判決などの債務名義が得られても、相手方が支払わなければ、預金や売掛金などの財産に対する強制執行が必要となる場合があります。

「勝訴できる見込み」と「回収できる見込み」は別々に判断する必要があります。

05

フリーランス法で未払い報酬を取り戻せる?

2024年11月1日に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法」では、一定の業務委託について取引条件の明示などが求められます。また、対象となる発注事業者には、原則として給付の受領日から60日以内のできる限り短い期間内に報酬支払期日を定め、その期日までに支払う義務が課されます。

ただし、適用される義務は発注者の属性や取引内容等によって異なり、すべての取引に一律に同じ規制が適用されるわけではありません。

行政機関への申出と、実際の債権回収は別同法に違反する行為について行政機関への申出を検討できる場合がありますが、その制度自体が未払い金を直接取り立ててくれるわけではありません。回収のための民事上の請求は、契約と証拠に基づいて別途検討します。

参考:公正取引委員会|2026年フリーランス法特設サイト

06

将来の未払いに備える、当職の法律顧問プラン

少額債権で費用倒れが問題になる理由の一つは、トラブルが起きた後に、その都度、個別事件として弁護士に依頼する必要があることです。

当職は、個人事業主・フリーランスの方向けに、日常の法律相談と将来の費用負担への備えを組み合わせた法律顧問プランを提供しています。

月額顧問料

11,000円(税込)

税別10,000円/月

月60分までの法律相談・契約書確認等支払督促 年2件まで着手金0円 ※所定条件あり毎月10,000円分の着手金減額枠

支払督促の着手金を年2件まで0円に

所定の条件を満たす支払督促の申立てについて、契約開始日から各12か月につき2件まで、かつ1暦月につき1件まで、着手金0円で依頼できる特典を設けています。請求金額そのものによる上限はありません。

対象は、債権の存在に争いがなく、発生原因・金額・支払期限・相手方の送達先等を資料で確認でき、当職が支払督促の申立てを相当と判断する事件です。個別の受任判断と委任契約が必要です。

支払督促の特典を使えた場合の一例 40万円の未払い報酬を全額回収できた場合

未払い報酬の回収額400,000円
支払督促の着手金0円
特別報酬(実回収額の10%・税別)44,000円(税込)

※顧問料(月額11,000円・税込)や裁判所費用等の実費は別途必要です。異議による通常訴訟への移行や強制執行などの依頼には別途費用が発生します。特典の適用・全額回収を保証するものではありません。

月60分の相談枠と、着手金減額枠

メール・LINE等による相談、電話・オンライン相談、契約書の確認・修正など、合計月60分までを顧問料の範囲内で対応します。また、顧問料の支払いを条件に、毎月10,000円分の着手金減額枠を付与します。利用対象や上限、超過料金については顧問契約の条件をご確認ください。

費用優遇の適用条件と契約期間

初回契約期間は12か月です。中途解約も可能ですが、無料特典の利用状況等に応じて精算が必要となる場合があります。また、顧問契約中であっても、個別事件を当然に受任できるわけではありません。

本プランは、今ある1件の未払い報酬を必ず安く回収するための制度ではなく、継続的な事業活動の法的リスクに備えるためのサービスです。既に発生している紛争については、受任の可否と費用を個別に確認します。

SOLE PROPRIETOR LEGAL ADVISOR

未払いが発生する前から、
法的な備えを。

サービスの対象・適用条件・料金は専用LPをご確認ください。
法律顧問プランを見る
07

よくある質問

Q未払いが10万円や20万円でも弁護士に依頼できますか?

依頼自体は可能ですが、弁護士費用との関係で経済的に見合わない場合があります。本人による請求、裁判所の手続を自分で利用する方法なども含めて検討するとよいでしょう。

Q契約書がなくても請求できますか?

契約書がなくても、契約の成立、報酬額、業務の履行などを立証できれば請求できる場合があります。メールやチャット、発注記録、納品記録等を保存してください。

Q支払督促なら必ず回収できますか?

いいえ。相手方が異議を申し立てれば通常訴訟に移行します。また、強制執行ができる状態でも、相手方に十分な財産がなければ回収できない場合があります。

Q顧問契約をすれば未払いの回収は無料になりますか?

いいえ。無料特典は所定の条件を満たす支払督促の着手金に限られます。顧問料、回収時の特別報酬、裁判所費用等は別途必要で、通常訴訟や強制執行への対応も別料金となる場合があります。

Qすでに未払いが発生しています。顧問契約の特典を利用できますか?

顧問契約を締結しただけで、既に発生している事件に無料特典が自動適用されるものではありません。請求権の内容、争いの有無、手続の相当性などを踏まえて、当職が個別に受任・適用可否を判断します。

08

まとめ|報酬未払いは回収可能性と費用の両面で検討する

少額の未払い報酬であっても、個人事業主にとっては大きな負担です。一方、弁護士への依頼では費用倒れが生じ得るため、「法的に請求できるか」に加え、「実際に回収できるか」「費用に見合うか」を検討する必要があります。

契約書や納品記録を整え、適切な請求手段を選ぶことに加え、将来の未払いに備えて日常的に法的サポートを受けられる体制を整えることも選択肢です。

当職は、法律相談や契約書確認、一定の支払督促の費用優遇などを組み合わせた個人事業主・フリーランス向け法律顧問プランを提供しています。ご自身の事業に適した備えを検討する際に、サービス内容をご確認ください。

個人事業主向け法律顧問プランの詳細

この記事を書いた人

弁護士 濵岡宏紀

弁護士 濵岡 宏紀

En法律事務所 代表弁護士。第一東京弁護士会所属。不動産・立退き問題、労働問題、インターネット問題、離婚・男女問題、企業法務などを取り扱っています。立退き分野では、入居者・テナント側だけでなく、貸主側・ディベロッパー側の交渉実務にも関与してきた経験を踏まえ、事案に応じた実務的な解決を目指しています。